GABAの睡眠に関する効果・エビデンス
ストレス対策で知られるGABAには、睡眠改善効果もあります。
GABAは、「γ-アミノ酪酸(GammaAminoButyricAcid)」の略称で、植物や動物(ヒトも含む)の体内に広く存在するアミノ酸の一種です。
機能性関与成分としての「GABA」の科学的根拠をまとめました。
機能性関与成分「GABA」
機能性関与成分「GABA」を使った「睡眠」関連の機能性表示食品は、126件あります(2022/3/27現在)。
届出番号G322の機能性表示食品の届出書類から、「GABA」の効果・エビデンスを読み解きます。
届出表示
GABAの睡眠に関する機能性表示は、以下のようなものです。
睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)の向上に役立つ機能。
つまり、下記のような指標を対象としています。
- 眠りの質
- すっきりとした目覚め
効果・エビデンス
この届出書類では、GABAに関し、4つの研究論文に基づきレビューを行っています。下表のようにまとめられ、2報の論文に基づき、以下の3つの指標について改善が有効と結論付けています。
- 入眠潜時
- ノンレム睡眠時間
- 主観的評価(起床時の気分)
アウトカム |
文献 |
結論 |
入眠潜時、 深睡眠潜時、 ノンレム睡眠時間、 レム睡眠時間、 中途覚醒頻度、 デルタ波量、 主観的評価(寝つきの容易さ、起床時の気分、睡眠の満足度) |
2報(Yamatsu 2015、Yamatsu 2016) |
入眠潜時、ノンレム睡眠時間、主観的評価(起床時の気分)の改善が有効 |
睡眠効率 | 1報(Yamatsu 2016) | 介入が有効である旨の根拠にはならない |
ピッツバーグ睡眠質問票、 PSQI-j 合計スコア |
3報(Yamatsu 2015、Yamatsu 2016、外薗2016a) | 介入が有効である旨の根拠にはならない |
主観的評価 PSQI-j (睡眠の質、入眠時間、睡眠時間、睡眠効率、睡眠困難、日中覚醒困難) | 1報(外薗2016a) | 介入が有効である旨の根拠にはならない |
アテネ式不眠尺度スコア | 2報(外薗2016a、外薗2016b) | 介入が有効である旨の根拠にはならない |
入眠潜時
入眠潜時は、脳波測定による「入眠潜時平均差(min)」を指標にしており、2つの研究論文のうち、有意差がついているのは1報です。
文献 |
平均差(介入群vs. 対照群) | 摂取期間 | p値 | GABA摂取量 |
2 | -7.3 min | 1週間後 | p=0.02 | 100mg |
ノンレム睡眠時間
ノンレム睡眠時間(深い睡眠時間)は、脳波測定による「ノンレム睡眠時間平均差(%)」を指標にしており、2つの研究論文のうち、有意差がついているのは1報です。
文献 |
平均差(介入群vs. 対照群) | 摂取期間 | p値 | GABA摂取量 |
2 | 5.5% | 1週間後 | p=0.04 | 100mg |
起床時の気分
起床時の気分は、VAS(ビジュアルアナログスケール)による「主観的評価(VAS)平均差」を指標にしており、2つの研究論文のうち、有意差がついているのは1報です。
文献 |
平均差(介入群vs. 対照群) | 摂取期間 | p値 | GABA摂取量 |
2 | 22.8 | 1週間後 | p=0.025 | 100mg |
「GABA」のメカニズム
メカニズムについては、届出書類様式VIIに以下の説明があります。
GABA が末梢神経節において GABA(B)受容体に作用し交感神経系を抑制する自律神経系への作用によるものであると考えられる。睡眠時においては興奮を司る交感神経は抑制状態、リラックスを司る副交感神経は亢進状態にあることが望ましいとされるが、特に眠りの深さは自律神経活動と密接な関係があり、浅い眠り(レム睡眠)のときほど交感神経が優位であり、逆に深い眠り(ノンレム睡眠)のときには副交感神経が優位な状態とされる。従って、GABA の摂取により自律神経バランスが交感神経抑制・副交感神経亢進状態になることで、より深い眠りが得られやすい状態になり眠りの深さが改善されるものであると考えられる。また、その結果としてより良い睡眠が得られることで起床時の眠気が改善され、目覚めのすっきり感が得られるものであると考えられる。
(出典論文)
1. Yamatsu et al. Journal of nutritional science and vitaminology. 61, 182-187 (2015)
2. Yamatsu et al. Food science and biotechnology, 25, 547-551 (2016)
3. 外薗ら, 薬理と治療 44, 1445-1454 (2016)
4. 外薗ら, 日本食品科学工学会誌, 63, 306-311 (2016)
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本記事を作るにあたって、「機能性表示食品」の届出書類を参考にしています。
情報の調べ方は以下の記事を参照ください。